けんたさんは子供の頃から友達が少なく、
仲良くなってくるといつのまにか
自分から壁を作って相手を遠ざけてしまいます。
そのため、親友と呼べる友達がいないのが悩みでした。
もちろん人と親しくなりたいという
気持ちはあるのですが、
それ以上に苦手意識の方を感じ,
いたたまれなくなって自分から去ってしまうのです。
そんな悩みを抱えて
心理カウンセラーのセミナーを訪れました。
けんたさんはカウンセラーにこう聞かれました。
「あなたは小さい頃に
安心してお父さんやお母さんに近づけましたか?」
けんたさんには、
まるでそんな感覚はありませんでした。
思い起こせば子供の頃から
けんたさんの両親はいつも仕事で疲れた顔をしており、
けんたさんが近づくと
煩わしいといった態度を示しました。
けんたさんは自分のことなど
両親から全然気にされていないと感じていました。
けんたさんの両親のように
子供に無関心な親、子供を嫌う親、
機嫌が急変したり虐待する親に育てられた子供は
<人に近づいてはいけない>
というビリーフを持ってしまいます。
そのビリーフを持つと、
人と親密な関係を持つことに対して
危険や恐怖を感じてしまいます。
そのため、けんたさんのように
人間関係を適切に築くことができなくなります。
仲の良い友人もできず、
できても自分から壁を作ってしまいます。
そのほかにも
・近づいて欲しくない雰囲気を出している
・人と一緒にいるとリラックスできない
・人とハグできない
・人から触られたり人に触れるのが嫌
・人に自分の本音を言えない。
・自分の本心を悟られないように自分が喋り続ける
などということがみられます。
けんたさんはセラピーの中で、
近づかせてもらえなかった両親に対して
悲しみと怒りを出し、
しかし両親から求めることはもうできないと
期待を外す決断をしました。
代わりに、同じセミナーを受けている人たちの中から
両親の代わりとなる理想の両親を選んで
目の前に立ってもらい
一歩一歩近づいていきました。
ただ、その最中もけんたさんには恐さがわいてきます。
近づいたら拒絶されるのではないか、
機嫌が悪くなるのではないか、という恐さです。
けんたさんはその恐れを正直に伝え、
理想の両親に確認しました。
「近づいても僕を拒絶しませんか?」と
理想の両親の「拒絶しないよ」
という言葉を信じてけんたさんは
一歩づつ近づいていきました。
そしてついに、
理想の両親のそばの目の前に近づき
ハグしてもらいました。
その後、けんたさんは人と一緒にいる時も
リラックスして過ごせるようになり、
仕事でもプライベートでも
精神的に疲れることがなくなったとのことでした。