インナーチャイルドは、あなたの幼少期の傷ついた自分です。
インナーチャイルドは今のあなたに
声を掛けられるのを待っています。
さみしかったね。つらかったね。不安だね。
そんな寄り添いの言葉や
あなたは何も悪くなかったんだよ。
あなたはいい子だったよ。がんばっていたんだよ。
いつもそばにいるからね。いつも一緒にいるからね。
などという温かみやねぎらい、いたわりの言葉を。
子供の頃、あなたは不安な思いがたくさんありました。
そんな時、現実の父母、養育者が
しっかりと受け止めたり、手をつないだり抱きしめてくれたら
不安が和らいだと思いますが
そうでなければいつまでも幼い気持ちのままで
心残りを抱えてしまいます。
そして、時を経て今もその声は
あなたの気づかないところで出しているのです。
ある書物で心に残っているエピソードがあります。
中年の男性Aさんが、
職場で事あるごとに部下に厳しく当たっていました。
部下はそんな上司についていけません。
部下のモチベーションも低下し、業績も悪化していきました。
ある日、その上司も部下とうまくいかないことを悩み、
気持ちが追い込まれてその著者の元へカウンセリングに来ました。
その方が部下に厳しくする理由などをひとしきり聞いたあと、
話は生い立ちへと向かっていきました。
Aさんには兄弟がたくさんおり、生活はとても苦しく、
親は生活を支えるのに必死でした。
とても子供に目を向ける余裕などありませんでした。
そんな環境の中ですから
親に甘えたい気持ちを抑え頑張っていたと言います。
ある日、運動会のために
まっさらな運動靴を買ってもらったことがありました。
嬉しくて嬉しくて、その方は
運動靴が盗まれるのではないかと夜に何度も何度も起きて
靴があることを確認したというのです。
そんな思い出を語ってくださったあと、
そのカウンセラーが問いかけました。
「もし、あの時の自分へ声を掛けるとしたらどのような声を掛けますか?」と。
その方は
「おじさんがちゃんと盗まれないか見ていてあげるからね。
安心しておやすみ」
と言うやいなや、号泣したといいます。
その運動靴は、Aさんにとって
両親から唯一もらった愛情の証ように
感じられるものだったのです。
それが無くなってしまわないか、
心配で心配でならなかったのが
カウンセリングを通して見えてきました。
このような時間を過ごした後、
Aさんは部下への接し方が柔らかいものへと変わったそうです。
仕事を信頼して任せていくようになり、
部下との関係性が良いものになっていきました。
今のAさんが、子供の頃のAさんの気持ち
すなわち両親の愛情を求めつつ我慢していたこと、
やっともらえた愛情の証が消えてしまわないか
不安でたまらなかったことなどが、しっかりと自覚できたこと。
このように自分の幼少期に癒やされてこなかった思いを
大人になった自分が気づいて受け止めていくと、
まず自分自身との関係性が良好になります。
そしてそれが写し鏡のように
周囲の人たちとの関係も良好になっていきます。
逆に幼いあなたの訴えの受け止め先を
(幼いあなたが訴えているという自覚はないでしょうが)
他者にしてしまうと、
他者との間にヒビが入ってしまいます。
心の中の幼いAさんはずっと
このように言っていたのではないかと想像します。
「ぼくは、甘えたいのを我慢して一生懸命頑張ってきたんだよ。
僕の頑張りを認めてよ。僕をいっぱい愛してよ」と。
それを部下に(無意識にですが)向けてしまっていたため
部下に過度に厳しくなり干渉し、関係がうまく築けなかったのです。
その受け止め先があなたの夫や妻なら、
毎日の家庭環境が居心地の悪いものになってしまいます。
自分の子供になら、子供が潰れてしまいます。
ですから、今のあなたにできることは、
大人になったあなたが子供の頃の傷ついたあなた(=インナーチャイルド)
の親になってあげることなのです。
インナーチャイルドの気持ちを汲み取り、共感してあげる。
受け止めて心の中で抱きしめてあげる。
そんなことを繰り返すことで、現実も変化が起きていきます。